フリセル男

ぼくはパソコンを起動させると、
まず、なにはともあれ、どんなに忙しくても、
フリーセルを何セットかやってしまうような人間だ。
人間と言うのもおこがましい、謙虚に人間の屑というべきかもしれない。
それが、このところ、フリーセルだけでおさまらず、
スパイダソリティアにも手を染めて、ああ、
まだ初級クラスなのだが、かれこれ二千回もプレーしたろうか、
その勝率が約80%と、フリーセルより高いのである。
一時は調子こいて(そこがバカのバカたるゆえんなのだが)
「中級」(!)に挑戦したこともある。
身の程を知らぬとはこのことか、結果は勝率25%程度を脱せず、
つまらなくなって初級に逆戻りというわけなのだ。
中級から初級に戻った時には「下流社会」に落ちたような、
負け組み意識の漂う空気にむしろ居心地の良さを感じたものである。
こうなってはもはや人間の屑とはいえまい。
人間の、という形容は美しすぎ、立派すぎると思えるのだ、自分でも。
人間から動物へ格下げしてはどうだろうか。まだ下がありそうだし。
ではさしあたり「動物の屑」にしておこうか。
でも、こういう言い方は動物諸君に失礼ではないだろうか。
人間より動物のほうがずっと神に近い存在だ。ネコをみていればわかる。
人間は動物を食べて神に近づいているのだ、ともいえる(ほんとか?)。
そんな動物様の屑だって、人間よりはマシであろう。
では人間の屑の下は、やはり単なる屑なのであろうか。
それは、屑に失礼か。
ではやはり、「人間の屑」というしかなさそうだ。
さしあたり、それがもっとも格下のようなのである。