コーヒー・パニック

悪いことは重なる。
それもささいなきっかけから。
きのうのことだ、ヴェローチェでコーヒーをのんでいた。
広げた文庫本のページに目をやりながら、
タバコを1本吸おうとして、箱から取り出した。
ふと、それを取り落とした。
タバコはテーブルの足許にぽとりと落ちた。
左手を下に伸ばしたが届かない。
しゃがんでそれをとろうとしたら、腰に痛みが走った。
タバコに指先が触る寸前に、あわてて背筋を元に戻した。
その動作で、テーブルからすこしはみだしていたトレイが持ち上がった。
トレイの端が急に上がったので、コーヒーの入った紙コップが倒れた。
その勢いがよすぎて、コーヒーはトレイの外までこぼれて流れた。
コーヒーは広げていた文庫本にかかり、ページを茶色く染め、
一部はテーブルを伝って下に落ちていった。
そこにはぼくのバッグがおいてあり、
文庫本を取り出したときに口をあけたままだったので、
ぼくのかわりにバッグがコーヒーを飲むことになった。
あっと思ったときにはもう遅く、
バッグの中に入っていた書類もいくぶんかコーヒー色に染まったろう。
数秒間の間にこれだけのことが連続して起きた。
腰の痛みはギックリ腰を予感させたが、幸い瞬間的なもので、
姿勢を戻してじっとしてたら治まった。
バッグの中の被害をすぐにチェックしたかったが、
またしゃがむのは危険と思い、テーブルの上の処理を先行した。
ポケットからティッシュを出し、テーブルを拭く。
そのときになってふっと周囲を見回したら、
さっと視線がそらされるのがわかった。
どうやらみんなに見られていたらしい。
オシマイ。
で、なにがいいたいわけ? 落としたタバコは拾うな、とでも?
かなりバカっぽい教訓でした。