「百」にひそむ魔

佐伯さんに会ってきた。「文庫書き下ろし時代小説100冊達成」のお祝い本インタビュー。
百という数字には魔物が宿る、か。「百物語」もそうだし、漱石の「夢十夜」の
最初の夢の「もう百年たったんだな」もそうだった。
単なる通過点、と思っていたそうだが、99冊目から100冊目を書いてる途中で、
愛犬ヴィータと散歩に出てるとき、ふらっときたそうだ。めまいというか、
意識が薄れる状態。犬を連れて帰らなきゃ、という意志が残っていたので、
なんとか家にたどりついたという。ほんとにあぶないところだったのだ。
そうだよなあ。57歳から書き始めて8年で百冊。
最初の2,3年は年間数点だったから、毎年12冊から15冊も書くようになったのは、
この5年くらいなのだ。短期間でそれだけの作品を生み出してしまうパワーは、
ちょっと前例がないのではないか。こんなにも量産型の作家だったとは。
ただ、元気に見えても疲労やストレスは、
どこかに積もり積もっていたのかもしれない。
いずれにしても、ややペースを落とそうと決めたらしい。それでもツキイチペース。
同時進行する10のシリーズの完結に向けて、書いてゆくしかない、とのことだった。
最新刊の「阿片」(講談社交代寄合伊那衆シリーズ)も一気に読み終えた。すかっとした。
パワー、まったく落ちていない。