奇跡の捕球

野球で奇跡的なファインプレーをしてしまった。
相手チームもびっくりするやらあきれるやらで、拍手するしかないって感じだった。
守備でしかチームに貢献できなかったが、まあ、よしとしよう。
試合は8−5で勝っていた。でも追い上げられている。
投手交代直後で、三回の表一死、相手のランナーが二、三塁にいる。
ぼくは守備位置替えでライトからファーストに移っていた。
何球目だったか、バッターが速球にバットを当てた。
珠はフラフラッとぼくのほうに上がってきた。
一塁後方のフライだ。セカンドが回り込むか、ライトが思いっきり前進するか。
ぼくはくるりと外野のほうに向き直って、走った。
そして急ブレーキをかけ、上を見た。フラフラッと上がったボールが、
落ちてくるところだった。グラブを前に差し出した。ボールはすぽっとそこに収まった。
それだけのこと。ほんの一、二秒の間の出来事だろう。
でもこれを落としたら、確実に一点か二点を失っていた。
ホームに背を向けてフライをとったのは初めてのことだ。
ボールを見ながら後ずさりしていたら、きっと捕れなかっただろう。
微妙な判断、間合いがすべてばっちりかみあって、捕球できた。
それで投手も次の打者を三振にとり、ピンチを脱出。
結局8−5のまま最終回を終わって勝ち、ベストエイト進出だ。